打ち合わせの記録をAIに渡して要約を頼んだのに、返ってきたのは当たり障りのない箇条書きだった。間違ってはいないけれど、自分で読み返せば分かる程度のことしか書いていない——そんな経験はないでしょうか。

プロンプトの書き方を変えるより先に、見直す余地があるのは渡し方のほうです。改行が崩れたまま貼る、1時間分の議事録を丸ごと投げる、伏せるべき箇所を消したせいで文の意味が通らなくなっている。こうした状態で渡すと、返ってくるものも曖昧になりやすいというのが実務の感触です。

この記事では、渡す前の下ごしらえと、返ってきた出力の後処理を、作業の順番として整理します。使うのはブラウザの中だけで動く道具で、文章を別のサービスに預ける工程は増えません。

なお、そもそもAIに貼ってよい文章なのか——社内規程や取引先との契約をどう確認するかは、ChatGPTに社内文書を貼る前に――個人情報マスキングの実務手順に書きました。本記事はその続きにあたる、手を動かす側の話です。

渡す前の下ごしらえ

1. 伏せる

氏名や取引先名を、文脈を壊さない形に置き換えます。削除ではなくラベルに置き換えるのが要点で、理由と手順は前回の記事にまとめました。個人情報マスキングはその置き換えを機械的に済ませるための道具です。

ここでは1点だけ補足します。置き換えは、後の工程より先に済ませてください。整形や分割を先にやると、伏せるべき箇所が分割の境目にまたがったり、整形で行が繋がって見落としたりします。順番はこの記事の並びのとおりです。

2. ダミーで試す

初めて試す手順——たとえば「この形式の表から要点を抜き出して」といった指示——は、本番のデータでいきなり試さないほうが落ち着いて進められます。指示の書き方を何度か直すことになりますし、その試行錯誤の分だけ本物の文章を外に出すことになるからです。

ダミーデータ生成は、実在しない氏名・フリガナ・住所・郵便番号・電話番号・性別・生年月日・メールアドレスを、必要な項目だけ選んで1〜1000件作れます。出力はCSV・JSON・表の3形式なので、表を扱う指示の練習台にはCSVか表が向きます。

ダミーで手順が固まってから、同じ指示を伏せ済みの本番データに向ける。この順にすると、試行の回数が増えても外に出る情報は増えません。

3. 整える

PDFや社内システムからコピーした文章は、たいてい見た目が乱れています。1文の途中で改行が入っている、全角と半角のスペースが混ざっている、空行が何行も続いている。人間なら読み飛ばせる乱れですが、渡す前に均しておくと出力が安定しやすくなります。

テキスト整形には、この用途に使える操作が並んでいます。連続スペースを1つにまとめる、行の前後の空白を削る、空行を削除する、改行コードをLF/CRLFに揃える、英数字やカタカナの全角と半角を変換する、行のソート・逆順・重複削除。ボタンを押すたびに1つずつ適用される形なので、効きすぎたと思ったら戻して次を試せます。

ここで避けたいのは、整えすぎることです。空行を全部消すと段落の切れ目まで失われ、話題の区切りが伝わらなくなります。見た目の乱れは直し、意味の区切りは残す——このさじ加減だけ気にしておけば十分です。

4. 量る

長い文章は、一度に渡すより区切って渡したほうが、返ってくる要約が具体的になりやすいと感じます。前半の話題が後半に埋もれにくくなるためだと思いますが、どのくらいで区切るかは、扱う文章と使うサービスによって変わります。

そこで役に立つのが、自分なりの目安を持つことです。文字数カウントは入力と同時に、文字数(すべて)・文字数(空白なし)・行数・400字詰め原稿用紙の枚数を表示します。「うまくいったときは何字くらいだったか」を何度か測っておくと、次からは貼る前に判断がつきます。

区切るときは、話題の変わり目で切るほうが結果が安定します。字数ちょうどで機械的に切ると、文の途中で分かれて前後の繋がりが失われます。

受け取った後の後処理

5. 使える形に直す

AIの返答は、見出しに ## が付き、箇条書きが - で始まるMarkdownの形で返ってくることがよくあります。そのまま社内のワープロ文書やメールに貼ると、記号が生のまま残って読みにくくなります。

Markdown変換に貼ると、見出しや箇条書き、表やコードブロックを含めてHTMLに変換され、隣に表示結果のプレビューが出ます。HTMLはコピーもファイルのダウンロードもできます。プレビューを見れば、記号が意図どおりの構造として解釈されているか——見出しのつもりの行がただの文になっていないか——も確かめられます。

6. 人が読む

最後は自分で通して読みます。ここは省けません。

特に確かめたいのは、固有名詞と数字です。伏せたラベルを社内向けの実名に戻す作業では、対応表を見ながら1つずつ置き換えることになります。日付や金額といった数字も、元の文章と突き合わせてください。要約は本文にない言い回しを作ることがあり、そこに数字が紛れていると気づきにくくなります。

もうひとつ、元の文章に無いことが書かれていないか。前後の文脈から自然に読める補足が入っていることがあり、事実として通してしまうと厄介です。渡した文章と並べて読むのがいちばん確実です。

まとめ

渡す前に3手、受け取ってから2手。慣れれば数分で終わります。

  1. 伏せる。氏名・連絡先・取引先名をラベルに置き換える。他の工程より先に。
  2. 整える。途中改行・混在した空白・余分な空行を均す。段落の区切りは残す。
  3. 量って区切る。長ければ話題の変わり目で分割する。字数の目安は自分で測って持っておく。
  4. 形を直す。Markdownで返ってきた出力を、貼り先に合う形にする。
  5. 読む。固有名詞・数字・元の文章に無い記述を確認する。

初めての手順はダミーデータで試してから本番に移すと、試行錯誤の分まで外に出さずに済みます。

どれも大した手間ではありませんが、まとめてやろうとすると腰が重くなります。まずは「貼る前に一度整える」だけでも、返ってくるものの手直しはいくらか減るはずです。